植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

就職か就社か。

僕は油圧ショベル(パワーショベル)に関わる仕事をしています。
もちろん、最初はぜんぜん知らない世界でした。
だから、油圧ショベルについて、かなりしらべました。

僕は、新しく関わる分野についてしらべるとき、
必ずするのは、進化の過程をしらべることです。
なぜなら、どんなものも、最初は小さくてシンプルで手作りです。それはとても理解しやすいです。
そして、それがどう進化していったのかをしらべると、
スムーズに理解できます。

油圧ショベルは、元々は、蒸気で動きました。
最初は、ワイヤーをつかって動かしていました。
某ネズミのアニメーションのごく初期のものに、
ワイヤー式ショベルが登場しています。

蒸気とワイヤーという方法のエネルギー伝達効率は、
とてつもなく低いです。数%です。
だから、同じ仕事をするにも、莫大なエネルギーを
費やさないといけません。

つぎに、蒸気シリンダーが実用化されます。
それは、エネルギー効率が10%〜15%くらいになります。
蒸気とワイヤーの2倍〜3倍の効率です。

次に、油圧ポンプや油圧シリンダーが実用化されます。
それは、エネルギー効率が30%〜35%くらいになります。
蒸気シリンダーの2倍〜3倍の効率です。
そして、現在にいたります。
油圧ショベルが登場してから、約70年が経過しようとしています。でも、基本的には、70年前の技術で動いています。

油圧ショベルの大きな腕を動かすためには、
3本のシリンダーの長さの調節と、
旋回角度の制御で行います。
伸ばすと、縮める。が三本。
右と、左、が一つ。
それを、人間が両手で、まるでゲームの十文字キーのような感じで、制御して動かします。
これも、70年前とかわりません。

そろそろ、次の世代が来てもいいんじゃない?
と思います。
ということで、僕はいろんなことを研究しています。
(というか、楽しんでいます。)
もちろん、建機業界でも研究していると思いますが、
知らないからこそできることもあるかも、と思います。

油圧ショベルの進化のためには、
動力伝達効率の進化と、
操作方法の進化(シリンダー個別制御から、総合制御へ)
が不可欠だと思います。
僕は、油圧ショベルは、パトレイバーになるべきかも、
と思っています。
瓦礫のやまを乗り越えて、ひとを救うような
救助機械として進化してもいいかも。

いま、せっかく、土木建築業界は活況を呈しています。
このチャンスに、日本の油圧ショベルが、
世界的に見てもちょっとへんだよね、といい意味で
言われるように進化したらおもしろいなあと思います。

どうですか。こう聞いたら、油圧ショベルの仕事も
おもしろそうだな、と思いませんか。

残念ながら、今の子ども達は、仕事を知らなさすぎです。
少し昔に、14歳のハローワークという本もありましたが、
実際には、それどころでないほどの仕事があります。
どれも、興味深いです。
それらを知るためには、本当は、時間がもっと必要です。

世界は多様化しています。生きていくために、働くために、
知らなければいけないことは、毎年どんどん増えています。
だのに、子ども達の教育は、昔のままです。
だから、子ども達は、進路を選ぶのが難しいです。
学校においてある就職情報誌の中から選ぶしかないです。
中でも、その職業に関する学校が存在するものからしか
選べていないような気がします。
そうではない進路を選ぼうものなら、
「それは、大丈夫なの?」
「それは、安定していないんじゃない?」
「それで、食っていけるの?」
「もっと、いい仕事があるんじゃないの?」
と言われて、結局は保護者や先生が知っている、
「安定」「高給」「楽」っぽい進路しか許されないです。
これは、保護者や先生が世間を知らなければ知らないほど、
選択肢が少なくなる、ということを意味します。
しかも、「安定」「高給」「楽」を基準に仕事を選ぶと、
どんな仕事も「思っていたのと違った」になってしまう、
ということは、過去にも書いています。

就職するのか、就社するのか。
やりたいことのために働くのか、
給料もらえるシステムに所属するだけなのか。

天才は仕事を選ばない。という言葉もありますが、
どんな仕事も、よりよくを目指したらおもしろいものです。

仕事とは、人のために役に立つこと。
仕事は、悲しいことや、苦しいことや、不便なことを解決することから生まれます。

仕事とは、お金をもらうことですよ。と思い込むと、
おかねにならないことをしたら、損をする、と思うようになります。だから、日本は研究開発ができなくなりました。

仕事とは、嫌なことをがまんすることですよ。と思い込むと、
食っていくためには嫌なこともがまんできる、と思うようになり、わざと壊れるものをつくったりできるようになります。

繰り返します。
仕事とは、人のために役に立つこと。
仕事は、悲しいことや、苦しいことや、不便なことを解決することから生まれます。
それは、近くにも沢山あるのです。
そして、なければつくれ。です。