植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

管理のための管理

太平洋戦争で使用された、
アメリカの駆逐艦「シムス級」と
日本の駆逐艦陽炎級
1/350のペーパークラフトです。

どちらも、1939年頃から建造されました。

いままで、同じスケールで並べたことがなかったので
気がつかなかったのですが、
よくよく見ると、艦橋の大きさがぜんぜんちがいます。
体積では、約3倍です。
アメリカの駆逐艦の艦橋には、いったい何がつまっていたのでしょう。

第二次世界大戦が始まるまでの、アメリカと日本の駆逐艦の建造ペースは、ほぼ同じです。
しかし、大平洋戦争が始まった、1941年以降は大違いです。
日本は、1941年から1945年までで
夕雲級:19隻
島風級:1隻
秋月級:12隻
松級:18隻
橘級:14隻
合計:64隻
を建造しています。

しかし、アメリカは、同じ期間に
フレッチャー級:175隻
アレンMサムナー級:67隻
ギアリング級:41隻
合計:283隻
を建造しています。

これを、工業能力の差、と言い切ってしまう資料は少なくありませんが、当時の日本とアメリカは、人口では2倍弱程度の差しかありませんでした。

しかし、戦争になって、両国には大きな違いが生じます。
アメリカは、戦争開始と同時に、国を挙げての戦時体制に移行し、
乗用車などの生産も一時的に中止して、工業生産能力を急激に高めたそうです。
ところが日本では、戦時になって貿易がストップし、軍事物資が不足しはじめた頃に、軍がそれらの戦略物資の管理をはじめます。
軍の管理する倉庫は、お役所仕事そのもので、工業生産はとてもやりにくくなったそうです。
終戦時、軍の戦略物資倉庫には、かなりの量の貴重な資源が手つかずで残っていたとの話しもあります。

なんだか、震災時に、せっかく集まった支援物資や、
義援金が、必要とする人のところになかなか届かず、
管理しやすいところにしか行かなかった(そのおかげで、貴重なお金を湯水のようにつかったNPOなども発生したとか)というケースと、似ているような気がするなあ、と思います。

管理は大切です。
しかし、管理のための管理で一番やりやすいのは、
動きを止めてしまうことです。
そこに、日本は陥りやすいのかも。

それは、子ども達との関わり方でも見かけます。
子ども達の行動を管理抑制すると、管理はしやすいです。
でもそれでは、管理者にとって都合の良い無思考な人間しか育成できません。
なにをすればいいのかわからない。
なにができるのかもわからない。
どうしていいのかもわからない。
そういう悩みを抱える子達は、
子どもの頃に、なにかを自発的にやろうとした時に、
「やったことがないんだからやめておきなさい!」
「やめなさい!失敗したらどうするの!」
「あぶない!あぶない!怪我したらいけないからやめなさい!」
と、管理され続けたのかもしれません。

太平洋戦争時、日本は不沈艦を作ろうと努力します。
そして、不沈につくってあるのだから、沈むわけがない、ということで、損害をうけた時の対策の訓練をほとんどしなかったそうです。
対してアメリカは、ダメージコントロール訓練を徹底します。
その結果、日本の船は、あっさり沈んだり放棄されたりするケースが多かったのですが、アメリカの船は、とにかくしぶといです。
(日本の一部の船はかなりしぶとく生き延びますが、それは艦長の努力の賜物だそうです。)

何度も書いていますが、
教育とは、失敗の避け方や、責任の避け方を教えるためのものではありません。
教育とは、死に至らない程度の失敗を安全に経験させるためのものです。

管理者の責任を回避するための管理教育は、
もしかしたら、本来発揮できる力をものすごく奪うのかもしれません。

現在の日本の、単位労働時間あたりのGDPは、
フランスの半分程度という資料があります。
日本は、この管理型教育が改善されたら、
今の二倍くらいの生産能力を持つ可能性があるかもしれません。
もしかしたら、国際救助隊ぐらい編成できるほどの国になるかも。

なんて思いつつ、二隻の船をながめるのでした。

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