植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

幼体の形質を保つ成体

今日は市内の保育園の子達が
見学に来てくれました。

それはもう、めんこいです。
挨拶も大きな声でしっかりできるし、
話しも一生懸命にきいてくれるし、
好奇心でいっぱいだし。
一緒に仕事するなら、この世代は最高かも。
(肉体的にはできることが限られているし、知識も少ないです。でも、前向きな気持ちは最高です。)

いま、日本には、外国人研修生が大勢来ています。
たいてい、真面目で熱心で責任感があります。
多少具合が悪くても、必死で職場に出てきます。
(もちろん、そんな状態で仕事をしても危ないので、
結果的には休むことになるのですが、そのガッツに惚れる経営者は多いです。)

それに対して、いま日本では、大学院をでるなどの高等教育を受けた若者が、研究開発の仕事に就くことを避けたり、
または、研究開発の仕事をする時に、責任を避ける傾向が強いそうです。
研究開発なのに、何をすればいいのか文章で指示をしてくれ、
という人もいるそうです。
「自分で考えるのは嫌です。指示されたことを指示されたとおりにやりたいです。
なぜならば、自分で考えたら、責任を負うじゃないですか。」
という人は、研究開発の仕事はできないです。

知識が足りないけど、責任感のある人と、
知識は豊富だけど、責任感のない人と、
僕なら、前者と一緒に仕事がしたいです。

以前、犬は狼の幼体の形質を多く保ったまま成体になっている、という話しを書いたことがあると思います。
幼体ならではの好奇心や興味が、犬の知能や社会性を発達させた可能性があるそうです。
もちろん、物理的なパワーなどは、狼の方が有利だそうですが、
幼体の形質を残す犬は、知能などで狼に勝るそうです。

同様に、人間もまた、幼体の形質を多く残す成体だそうです。
それ故に、脳の中のシナプスが単純化されておらず、
複雑に絡み合うからこそ、ひらめきがあり、
それが発明や創造につながるそうです。

しかし、より成体に近づけることも可能だそうです。
繰り返しの反復的な学習やパターン認識と反射を鍛えると、
脳の中のシナプスは単純最適化され、
寄り道をしなくなります。
その結果、認識してからの行動ははやくなりますが、
ひらめきや創造はしにくくなっていくそうです。

僕は、小さい頃から、余計なことを考える子だったそうです。
いまでも、かなり変な角度から物を見ていることが多いです。
そのおかげか、ほかの人が気がつかないことに気付くことが少なくないです。
それは、野生のカンではないです。
おそらく、脳の中が幼体のようにごちゃごちゃなのかもしれないです。

以前、脳内年齢を測定するというゲームがありました。
友達に勧められてやってみたら、最初は60歳くらいでした。
悔しくて1時間くらいがんばったら、あっというまに、20代になりました。
僕はそのゲームに興味を感じなくなりました。

僕はときどき、子どもっぽい、と言われます。
あんまりいい意味ではないことが少なくないです。
でも、僕はそれでいいと思います。
だって、大人っぽいってどういうこと?
僕のイメージでは、あんまり好ましいイメージにならないです。

脳の発育を考えたとき、
それは、幼体に近い方が、より発達するのかもしれません。
その際には、単純な繰り返し訓練や、パターン認識による反射の訓練だけでは、きっと脳の発展には不十分なのかもしれません。
もっと思考に重きをおく必要があるのだと思いますが、
でも、思考は人それぞれなので、正解を定義しにくくなります。
でも、人生は、正解不正解が不明確なことが多いです。
それを、無理してジャッジしてしまうと、もしかしたら、思考力はのびないのかもしれません。

政治的なことなどのディスカッションの番組で、
マイケル・サンデルさんは、相反する意見をださせて、
それらの意見への意見を出させて、
「いい意見をありがとう!」で終わらせてしまいます。
勇気を出して意見を述べた人達は、お互いの意見が尊重されたことで、満足げな顔をしているし、両方の意見に歩み寄りも感じられます。

でも、池上彰さんは、出てきた意見に対して「それは違います」と言って、正してしまいました。
正された人は、あんまり嬉しそうな顔をしていません。

この違いは、実はとても重大なことなのかもしれません。

いくら暗記の知識を増やしても、
ロボットには勝てません。
いくら人間がパターン認識と反射をはやくしても、
ロボットには勝てません。
たまに、ロボット以上に高性能っぽい人間もいますが、
それは、かなり希な存在ですし、
そもそも、ロボットは24時間働くし、給料もいりません。

だからこそ、ロボットに負けない人を作るのではなく、
ロボットができないことができる人を作る方がいいです。

そのためには、子どもっぽい、という資質を大切にすべきかも。
最短コースではなく、寄り道一杯の遠回りがいいのかも。
ちょっと今の教育は、大急ぎで成体を作ろうと、
急がしすぎるような気がします。