植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

企業向けのCAP大人ワーク第一号は「いたがき」さん。

昨夜はCAPのワークショップに行ってきました。

CAPとは、子ども達を暴力から予防するための知識を伝える
ワークショップです。
内容としては、いじめや、不審者、知り合いからの性的な暴力を具体例として、対応の仕方などを劇を使って伝えます。

いま、毎年、赤平市内の全小学校と全中学校に提供しています。

幸いなことに、赤平市内の学校は、いじめ対策などにとても理解があるので毎年実施実現できていますが、
実際には、教育関係社でも、CAPのことを知らない人は少なくないです。

CAPは、まずは暴力を定義します。
暴力が曖昧だと、暴力を防げないからです。
多くの人が、自分がされていることは、いじめではなく、
相手はふざけているだけかもしれない、と、
苦しいことやつらいことをがまんしてしまい、
その結果、どんどんエスカレートしてしまうこともあります。

次に、暴力に対して、暴力で対抗してはならないことを伝えます。
そのためには
(1)いやだと言ってもいいんだよ。
(2)逃げる、離れる、近寄らない、でもいいんだよ。
(3)誰かに相談してもいいんだよ。
という方法を伝え、自分が相談できる相手のことを、
しっかり認識してもらいます。

あとは、劇を使い、
(1)暴力に屈してしまったケース
(2)暴力に対応できたケース
(3)暴力に対応できたケースを子ども達に参加してもらって再現
で、子ども達に練習してもらいます。

僕はこのワークショップは、とても良く考えられていると思っています。
ネットでいじめ対策を検索すると、
底に出てくるのは、警察の尋問の真似事であることがほとんどです。
残念なのは、警察ではなく、それを教師がすることです。
警察のプロの尋問のやりかたを、素人が真似するのです。
警察でさえ、尋問を録画して記録するようになりました。
それは、密室での尋問には問題があることもあるからでしょう。
でもそれを、素人がやるのです。危険だと思います。
ぜひ、録画して透明化してほしいです。

しかも、警察的対応では、発生を防ぐことはできません。
さらには、被害者がいじめを報告しても、
それがいじめかどうか認定されないとアクションがとれません。
被害者が「つらいんです」と言ってきても、
受取手が「そんなのつらくないだろ」と言ってしまったら、
そこでもうアウトです。
さらには、受取手が、とても相談できないような相手だったら、
そもそも子どもはいじめの相談に来てくれません。

いじめは、窃盗や暴行などの犯罪とはちょっと違います。
原因があやふやなこともすくなくないです。
加害者が多すぎて、加害者を特定したり、切り分けたりが困難な場合もあります。
だから、刑事事件のような対応をするのはとても難しいです。

だからこそ、CAPのような「対処の仕方」を子ども達が共通の知識として持つことが、いじめなどを予防するために効果的ではないかと思います。

赤平市では、警察の方々もCAPのワークショプを見てくれています。
その結果、居場所のない子どもの居場所作り、などの活動にも
関われるようにもなりました。

でも実は、CAPにも足りない点があります。
それは、「きく人」です。
CAPでは、子ども達に、暴力への対処の仕方として、
誰かに相談してもいいんだよ。と伝えています。
ってことは、きいてくれる人がいないといけません。
子どもの相談を受け止められる大人が必要です。
そんため、CAPの子ども向けワークショップは、
大人向けワークショップとセットで提供することになっています。
しかし、最近はどの家庭も忙しいのか、
大人向けワークショップに参加してくれる人は、
毎回同じ顔ぶれで、しかも、少ないです。

この状況を打開するために、赤平では、
大人向けワークショップを、企業に提供してみようと思いました。
忙しくてワークに来れない人は、たいてい、企業で働いているからです。

その新しい取り組みの第一号を引き受けてくださったのは、
同じ赤平市内の、「いたがき」さんです。
手作りの素敵なカバンで有名な企業です。
「いたがき」さんでは、社員の勉強会を定期的に開催しており、
その中でCAPワークショップを提供できるようにしてくださいました。

僕が知っている限り、伸びている会社は、間違いなく
社員の勉強会をしっかりやっています。
そういう会社は、「忙しい」を言い訳にしないのでしょう。
勉強会の最大の敵は「いそがしい」です。
できない理由ではなく、できる理由を考えないと、時間を生み出せません。
勉強会を開催できるような時間を生み出せる企業は、
「できる理由を考える」ことができるのだと思います。
だから伸びるのだと思います。
居酒屋さんでも、定期的に「社員研修のため休みです」という
紙が貼ってあるお店がありますが、そういうお店は、
働いている人の質が段違いです。

と思っていたら、やっぱり、いたがきさんの社員さんは、
段違いでした。
ワークショップにもどんどん参加してくれます。
笑顔になったり、深刻な顔になったり、ものすごくメモを取ってくれたり、すごいです。

CAPは、とても良くできたプログラムです。
でも、ゆとり教育が終わり、学校はぎゅうぎゅうにスケジュールが詰まっています。そのため、学校がCAPを引き受けてくれないケースがとても多いです。
札幌にはとても大きなCAPチームがあるのですが、
実際には、養護施設へのワークショップ提供がほとんどで、
普通の学校にはほとんど提供できていないのも事実です。
さらには、保護者も忙しくてワークに参加してくれません。

キーワードは「忙しい」です。
これは、究極のやらないいいわけです。

「いそがしい、いそがしい」とぼやきながら、
毎日同じことを繰り返し、成長しないままに年老いていくのか。
それとも、
できる理由を考えて、時間を生み出して、新しいことに挑戦し、
成長していくのか。

CAPでは、暴力の定義として
(1)人間には、安心、自信、自由という権利がある。
(2)それが脅かされる状態が「暴力」
(3)その「暴力」に対応するために、相手の安心、自信、自由を奪ってはいけない。

としています。

安心、自信、自由。
このなかで、最も重要なのは「自信」だと思います。
なぜなら、自信が無いと不安になります。=安心ではない
自信が無いと、判断できません=自由に選べない

もちろん、安心できないと自信が持てない、とも言えます。
自由に選べないと自信が持てない、とも言えます。

ただ、なに不自由ない安心な家庭で、自由に選べるのに、
自信が無い、という子どもも少なくないです。

僕は、生きていくために自信が必要だと思っています。
そして、自信は、お金では買えないし、人を見下しても手に入りません。
自信は、やったことがないことをやると身に付きます。
で、やったことがないことをやるためには、
できる理由を考えないといけません。やる時間も生み出さないといけません。

なんかつながってきました。

できる理由を考えて、時間を生み出せる企業が成長できるのは、
そこで働く人達の心に「自信」があるからなのかもしれません。
それが、誇りになり、ブランドにつながるのかもしれません。

だからやっぱり、企業にとって、勉強会はとても重要なのでしょう。
「忙しい」を言い訳に、やらないでいると、
もしかしたら、まずいことになるのかもしれません。
僕も気をつけよう。

http://www.itagaki.co.jp/shops/honten.html