植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

先輩の役目

僕は、中学生になってから、違和感を感じたことがあります。
それは、先輩という存在です。

同級生はみんな、先輩を恐れます。
そして、先輩の言うことは絶対的です。
先生も、保護者も、同じ考えのようです。

でも、先輩の中には、尊敬できない人間も少なくないです。
不当に、理不尽に、後輩をいびる先輩もいます。
後輩に、草を食べさせたりする先輩もいました。

ひどい目にあった後輩は、口々に言います。
「来年が楽しみだ」
なんで?と聞くと、
「後輩が入ってくる。後輩をいびってやる。そうしないと損だ。」
これは、まったく理不尽で納得できない理論です。

たったの数ヶ月先に生まれただけで、
1学年上だというだけで、
なぜ、理解不能の支配が行われるのか?
そして、なぜそれが常識なのか?
僕にはわかりませんでした。

この先輩後輩の理不尽な支配関係は、
特に運動系の部活で強烈でした。

僕は、自分がした嫌な思いは、他の人にさせたくないと思います。
そして、年齢に関係なく、人は尊重されるべきだと思います。
もちろん、年齢が下の人であっても、尊敬できる人もいます。
そういう思考では、学校の部活にはなじめませんでした。

確かに、組織において、命令指揮系統を明確にするのは重要です。
しかし、命令指揮と、支配は違います。

僕はいま、48歳になりました。そして、経営者です。
だから、僕は、会社の仲間と関わる時に、かなり気をつけます。
なぜなら、僕の意見が支配になってしまう可能性が高いからです。
先輩後輩の関係を叩き込まれた人達は、
ただでさえ、年齢を経ている僕の意見を重視してくれます。
でも、僕も間違いを犯します。あやまった判断もします。
ましてや、すべてのことを僕が判断しなければいけないなら、
会社のできることは、僕の処理能力で制限されてしまいます。

一人のできることは、一人分です。
でも、力をあわせると、素敵なことができます。
しかし、「力をあわせる」と、「支配は」は違います。
「考える」仕事においては、支配では、
所詮は一人分の仕事しかできないです。

アメリカ軍は、兵士の損失を減らすために、
特殊部隊を強化しました。
特殊部隊は、一人一人が判断し行動できる組織です。
だから、リーダーが倒れても、作戦を続行できます。
従来の部隊では、リーダーが倒れると、作戦が停止してしまい、
損耗が大きくなってしまうのだそうです。
(その様子は、映画「ブラックホークダウン」でも描かれています。)

以前、オウム真理教に関するテレビを見ました。
その中で、再現映像で描かれていたのは、
リーダーが部下を支配していく様子でした。

リーダーは、部下を集めて、柔らかく話しかけます。
「この問題について、君たちはどう思う?意見をいいたまえ。」
すると、部下は、がんばって考えて答えます。
すると、リーダーは、その考えを否定します。ダメ出しをします。
後だしじゃんけんは負けることがありません。
いくらでもへりくつで、相手の意見を押さえつけることが可能です。
たとえ、論点がずれてもおかまい無しです。
そして、
「きみは考えが浅い」「きみの考えは足りない」
「きみは普段から考えていないからだめなんだ」
「きみはまだまだだ」と否定します。
すると、部下は、思考力を失い、支配されていくそうです。

でも、こういう嫌らしい先輩は、いろんな組織にいると思います。
「会議」と称して「説教」をする人達です。
僕は、そういう「支配者」になりたくないです。

歴史を学ぶと、過去の、様々な作戦の失敗や、
会社の失敗の背景には、
かならず、こういう、「支配者」の存在があります。
まわりの人間が、問題解決のためにではなく、
その「支配者」の顔色をうかがって行動してしまうと、
問題は解決できなくなります。
そういう組織は、「お前はもう死んでいる」状態です。

年長者の役目は、支配ではありません。
年長者は、経験があります。たくさん失敗しています。
だからこそ、後輩の失敗をリカバリーできます。
年長者は、人脈があります。
だからこそ、後輩のやりたいことを支えるよう根回しができます。
年長者は、後輩を支え、助け、伸ばすために存在すべきです。
しかし、経験が無く、人脈がない先輩は、
「教育」と称した後輩いびりしかできません。

嫌なことを投げ出す人は、経験と人脈を得られません。
そういう人は、組織に取ってマイナスの先輩になります。

だからこそ、嫌なことを投げ出さない人を増やした方がいいです。
「だったらこうしてみたら?」です。
「明日のために、今日の屈辱に耐えるのだ」です。
そういう人が増えたら、そういう人は、素敵な先輩になり、
後輩を支え、育てると思います。

先輩は、正しく経験と人脈を積み上げることが大切です。
そうすれば、自動的に、理不尽な支配をしない人になります。
学校の部活動では、素晴らしい先輩を育成する努力をすべきです。
くだらない支配者を育成してはいけません。
(ただし、素晴らしい先輩を育成できるのは、素晴らしい先輩だけです。くだらない支配者は、くだらない支配者しかつくらないと思います。)

年長者は、注意すべきです。
過去の常識や、自分の不愉快を押し付ける説教をしていないか?
後輩の意見のあらさがしや、ダメ出しをしていないか?
自分は率先して行動しているか?
「俺ががんばってるのに、まわりの人間は何もしない。」とぼやいていないか?(こんなこと思う段階で負けです。足りないと思えば、自分が動けばいいです。)
こんな人達は、おとなしく、後輩を邪魔しないよう気をつけたらいいです。

リーダーの役目は、カリスマでも、命令でもありません。
リーダーの役目は、リードです。
率先して行動することです。
その背中こそが、後輩を育てます。