植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

地域を支える人材を育成する高校

今日は、和歌山の有田中央高校でした。

3年前にも来たことがあります。

とてもいい学校でした。
いい先生と、反応のいい生徒さん達。

講演が始まる前も、みんな楽しそうに話していたのが、
あっというまに、恫喝無く静かになりました。
これは、先生と生徒さんが、信頼しあえている証拠です。
沢山の学校に行っていますが、これができている学校は、
そんなに多くはありません。


この学校は、3年かけて、かなり学校を改善したそうです。
たいていの場合、高校は、県(北海道は道)の管轄です。
そのため、市の教育委員会の影響は、少ないです。
その結果、高校は、町や地域との連携よりも、
学力や進学率や生徒数確保に傾注してしまいがちです。

僕も、高校の学校評議員を経験していますが、
地域の評議員の意見などは、聞くけど聞き流す、という
独特の雰囲気がとてもいやでした。

しかし、この高校は、地域を支える人材を育むことに力を入れ、
地域の企業との連携を深め、
地域における学校の評判をかなり改善し、
いまでは、地域の企業の方達数十人と、
生徒がグループワークのような形で話し合うようなことまで
できるようになったそうです。
それだけの数の大人が、学校のために、平日に時間を割いて
学校に集まるという関係をつくれたことがすごいです。
同時に、それは、この学校の卒業生が、がんばって、
信頼を得ていることの証拠でもあると思います。

従来は、学力向上に力を入れたら、
その子達は、街からいなくなって、かえってきませんでした。
そして、街に残るのは、「進学できなかった子」でした。
それは、コンプレックスになることも少なくなかったです。

でも、僕は、「街に残りたい子」という選択肢を
もっと強化しても良いのではないかと思っています。
そうしなければ、最高学府を有さない街は、
すべて、進学過疎から逃れられないです。

地域にどんな企業があるのか。
地域の企業の良さは。
普通の高校生は、そんなこと、全く知りません。
知るチャンスも無いです。
なんでかな。
高校生は、進学情報誌と、就職情報誌でしか、社会を知ることができないケースが少なくないです。
(職場体験に協力している企業も、普通は、全体のごく一部です。)
(職場体験を断るようになった企業もあるはずです。そういう企業は、その学校の生徒を、もう採用しようとは思わないでしょう。ということは、その学校は、「企業から来ないでくれ」と言われる人材を育成している、ということになりませんかね。)


昔、中学卒業で就職するのが当たり前で、
高校進学を選択する人が少なく、
高校は、進学のためか、特殊な技能を学ぶための場だった時には、
高校で社会人に必要なことを教える必要はほとんどなかったでしょう。

しかし、いまは、中学校は中卒で就職できる能力を与えていません。そして、高校は、ほぼ全入の時代です。
この時代には、高校は、中学校(義務教育)で与えてくれなかった、社会人能力を教育する場所である必要もあるのではないかと思います。

この、有田中央高校の取り組みは、すばらしいと思います。
地域を支える人材を育成する高校。
こういう高校が、これからの地方の再生に、不可欠だと思います。
この学校の子達の前途に幸多かれと祈ります。