植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

恐怖による支配の後遺症

新しいロケットエンジン試験設備の建築が進んでいます。

数年前から、比較的小型のロケットエンジンの試験依頼が増えてきました。
でも、現在のロケットエンジン試験設備の配置では、
子どもたちが見学に来ている時には、試験できなかったのです。
そのため、おのずと、試験は冬に限定されてしまい、
いろんな人に、不便をかけてきましたし、
断らざるを得ない試験もありました。

そこで、今回は、子どもたちの見学コースから、
かなり離れた場所に、今までよりもさらに強力な
消音装置を装備した試験設備を作ることにしたのです。

窓から見ていたら、下で、顔見知りの電気工事の人の手伝いをしている社長が目に入りました。
がんばって働いています。
その姿を見ていて、「ああ、この人は、働きたい人なんだなあ・・」と思いました。
社長は現在83歳です。

先日、会社の仲間のことで、あんまりにも細かいことをいうもんだから、ついつい、「この会社は、10年後、20年後のことを考えて僕が経営しているんだから、目先のことで勝手なことしないでくれ。」と怒ってしまいました。
きつい言い方でした。

でも、今日、働く社長の姿を見て、もっと違う言い方あったなあ・・・と思いました。

僕も、少し前までは、会社の仕事の中でも、「俺がやったほうが早い!」と思える分野はたくさんありました。
でも、それは、僕が若かった頃の記憶に基づく判断です。
現実の僕は、どんどん目が老眼になり、筋力も低下していて、
昔できたことが、できなくなっています。
以前なら、簡単によじ登れたハシゴが上れなかったり、
簡単に乗り越えられた段差が乗り越えられなかったり・・・

どうやら、僕がやらないほうがいいみたいだ・・・・と
思えることが見つかる度に、どんどん寂しくなります。

と同時に、若い頃の記憶と、現在の能力の差も、どんどん開いていきます。

おそらく、社長は、このジレンマを、もっとはやくに、もっと強く感じているのだろうと思います。

僕が子どもの頃、会社の二階が自宅でした。
だから、窓から、社長が・・・父さんが、働く姿を見ていました。
雨の日も、雪の日も、車の下に潜って、
泥だらけになって部品を外して直していました。
その姿と、今日、窓から見下ろした姿が、なんだかリンクしてしまいました。

怒りは、判断力を低下させます。
ということを、いつも言ってるのに、できない自分がいます。
こと、親には容赦なくなってしまいます。
なぜなら、僕は父さんに木魚のように殴られて育ち、
その発言や行動の理不尽さに恐怖を感じて育ちました。
それを会社の仲間がくらったら、耐えられないかもしれない、という、勝手な思い込みが、僕の親への容赦をなくしてしまいます。
きっと、僕は父さんが怖いんです。

小さい頃の記憶や経験は、大きくなっても、人の判断や感情に大きく影響を与えてしまいます。
特に、恐怖による支配は、アドレナリン任せの判断や行動に直結することが多いように思います。

だから、恐怖による支配は、しないほうがいいと思います。
きっと、やがて、年を取ってから、悔やむ日が来ると思います。