植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

ロケットは軽さが命です。

ロケットが好き。ロケットを作りたい。という学生さんが増えてる感じがするのは、
とてもうれしいことです。
 
でも、時々感じる違和感があります。
 
ロケット作りたい子達は、カーボンにやたらこだわります。
GFRPより、カーボンの方が偉い、という偏った価値観を感じます。
そして、彼らは、全長2mもないようなロケットをカーボンで作ろうとします。
でも、そのくらいの大きさのロケットをカーボンで作ると、
強度的に完全にオーバースペックです。
カーボンの厚さを、0.5ミリでも、まだ強度がオーバーです。
実際には、厚さ1.5ミリ程度で作ってしまいます。
ということは、完全なデッドウェイトです。
 
重力と戦う宿命のロケットには、軽さが求められます。
ましてや、ロケットは、自分の重さを速度に変換して飛びます。
だから、速度に変換できない重さは、なるべく減らした方がいいです。
だから、なおさら、ロケット本体の重量は軽い方がいいです。
 
他人に自慢できる偉そうなロケットを飛ばしたいのか、
それとも、重力を振り切って上空を目指したいのか。
 
空を飛ぶものを設計するときに、「軽さ」を意識しない設計者は一流ではないと思います。
かつて、堀越二郎という人が、零戦の開発時に、徹底的に重量軽減をしました。
機体のそこら中に重量軽減の為の軽め穴を開けたのは有名です。
他の航空機設計者は、その軽め穴のことを「バカ穴」と喚び、あざけったそうです。
そういう設計者は、強度管理も、重量管理にも失敗しています。
作ってみたら、思った以上に強かった!なんて、あり得ないです。
バランスをとるために、バラストを詰む、なんてのも、あり得ないです。
でも、堀越二郎を笑った人達の飛行機は、そういう飛行機でした。
 
ロケットが重くなると、エンジンの推力を上げないといけません。
そうすると、エンジンが重くなります。使う燃料などの量も増えるから、タンクも大きくなります。それをおさめるためのロケット本体も大型化します。だから、ますます強いエンジンが必要で・・・
これをグロースファクターとよびます。
この悪循環から抜け出すためには、軽さの追求が重要です。
 
今年のスペースプローブコンテストには、ロケット部門も作ります。
スペースプローブとなると、電子機器の知識も必要になるため、ハードルがやや高いですから、
もう少し簡単にエントリーできる部門を増やすことにしました。
今年のロケット部門のレギュレーションは、
指定されたエンジンで、指定された高度まで打ち上げる。そのとき、一番体積のでかいロケットが勝ち。の予定です。
エンジンが指定され、高度が指定されるということは、重量が指定されるのと同義です。
その状態で、最も体積が大きいロケットが勝ちですから、いかに軽く作るかが勝負になります。
(一応、この方向で進んでいますが、詳細はちょっと変わるかもしれません。日程などは、まもなく紹介できると思います。)
 
技術者が、高価な材料や、高級な部品に目を奪われてどうする。
あなたの技能は、あなたのプライドを保つためのものなのか?
 
そんな足下すぐそばを見てどうする。
大事なのは、遥か遠くに輝く目的です。