植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

植松電機がロケット打ち上げをビジネスにしない理由

最近、民間の宇宙開発の話が盛り上がっています。
ていうか、こういうのは、過去に何度も経験しています。
 
思い起こせば、10年ほど前には、民間宇宙旅行がかなり盛り上がりました。
その頃に、植松電機はガイアの夜明けという番組で取り上げられました。
でも、あのブームもどこへやら・・・
 
で、ここのところ、いろんな人から、宇宙開発のビジネスについて質問されます。
でもその質問は、全部同じです。
「小型ロケットで人工衛星を打ち上げるビジネスをやるのですか?」です。
 
僕の答えは、「やるつもりはない」です。
そうすると、質問した人は、みんなきまってがっかりした顔をします。
 
僕が、自分の会社で、小型ロケットで人工衛星を打ち上げるビジネスをするつもりがない理由は、明確です。
小型ロケットで人工衛星を打ち上げるビジネスをしたい人は沢山います。
この中で有利なのは、「すでに飛ばしてる人」です。そういう人は世界的にはけっこういます。
そして、さらに有利なのは、「人件費が安く、打上の際に住んでいる人との調整がしやすい」です。ここまで考えたら、圧倒的に有利なのは、北朝鮮と中国です。
彼の国が、平和的な人工衛星打ち上げにロケットを使ってください、とアピールした瞬間に、
価格的に勝ってこない競争相手になります。
そういう所と競合になったら、間違いなく、安さ勝負になり、利益がなくなります。
安くするために、民生部品を使う、というのもありですが、僕らの手に入る民生部品は、世界中で誰でも手に入ります。そしておそらく、日本で買うのがもっとも高価です。
利幅が少ない場合、天候や気象の影響を受けやすいロケットは、衛星の保険料も考えると、ビジネスとしてはかなり厳しいと、僕は判断しています。
だから、僕はそういう、負ける要素が多いビジネスをしないです。一応ビジネスマンなんで。
ただし、僕らは事業としては打上はやらないけど、そういうビジネスをしようとする人達のために、技術サポートをするのはありだと思っています。
 
でもね、宇宙開発をビジネスにするのは、ロケット打ち上げだけではないです。
実際に、植松電機の、宇宙に関連する事業の売り上げは成長し続けています。
微小重力の実験も増えているし、様々な実験や研究のサポートも増えています。
毎年修学旅行で来てくれている学校の先生達も、「毎年設備が増えている」と驚いてくれます。
そうそう。植松電機に修学旅行で来てくれている子達の数も、すでに赤平市の人口を超えています。そういう子達が、これからの社会で活躍してくれると思います。
僕はこれは、立派な経済効果だと思っています。
 


僕は、今の「民間宇宙開発ブーム」も、長くは続かないような気がしています。
総理大臣がかわったら、政府の方針もかわるような気がします。
(以前にそういうパターンで痛い目にあってるから。)
自由とは、他力への依存度と反比例です。
だから、僕は、自分たちの力で、「すべきこと」をしていくだけです。
 
僕の宇宙開発は、人の自信と可能性が奪われない社会を作るための手段です。
その軸足をずらさなかったからこそ、いままで継続して成長させてこられました。リーマンショックも乗り越えました。

もちろん、その速度は、遅いと思う人もいるでしょう。
だって、どこからもお金もらわないで、20人の仲間の生活を守りながらだし、
そして、なんといっても、人材の成長にそぐわない事業の成長をしたら、転びます。
フェスティーナ・レンテです。(ローマ皇帝アウグストゥスの言葉らしい。ゆっくり急げ。という意味だって。)

でも、最近、人がどんどん育ってる気がしています。だから、頑張って設備投資をしています。
 
そういうことができてるのも、ひとえに、日本中のリサイクルの仕事をしている方達が、
植松電機のマグネットを使ってくれるからです。本当にありがたいことです。
今日も、暑い中、ホコリにまみれて、資源を作り出してる人達のおかげです。