植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

なんのための進学なのか。

遙か昔、ある国の官吏になるのは、世襲制だったそうです。
しかし、能力のない人が重要な役職に就くことで様々な問題が発生したために、有能な人を身分を問わず採用するために、試験が行われるようになったそうです。
で、一番最初の試験の頃は、まず、参考書がない。予備校もない。過去問題もない。
だから、文字通りの、実力テスト。
それは、さぞ実力のある人が見つかっただろうと思います。
 
しかし、まもなく、過去問題集ができます。参考書もできます。予備校もできます。
そして、それは、べらぼうにお金がかかります。
だから、自動的に、お金持ちの子しか、それらの情報を手に入れられなくなります。
とたんに、「有能な人を、身分を問わずに採用」は不成立になりました。結局は、世襲制にほぼ近い感じになっちゃった。
 
という状況に、今の日本はなってる気がします。
 
僕は高校生の頃、家にお金が無いことを知っていたから、
進学はしたいけど、国立大学一本勝負で、滑り止めも受けないつもりでいました。
しかし、進路の先生は、お前の成績では国立は無理だ。私立のこのあたりなら合格できるぞ。と教えてくれます。
でも、そこには、僕の学びたい流体力学の授業はないし、当時は、私立大学は、国立の4〜5倍はお金がかかりました。
そんなに高い学校には行けない、と説明しても、
先生は、僕の家の家庭の事情なんて気にもしません。
僕を、どこかの大学に合格させることしか考えていないようです。
その先生が気にしていたのは、僕の人生ではなく、その高校の進学率だったようです。
 
子どもが高校生の時に、保護者向けの進路説明会がありました。
どんなことを教えてもらえるのかな?いまの日本で必要とされている分野のことを教えてもらえるのかな?と思って参加してみたら、最初から最後まで、借金の仕方の説明でした。
なぜ進学しなければいけないのか?なんて、一言もないです。
 
いまの大学は、学費だけではなく、なぜか留学がセットになってるケースも多く、それにはすごくお金がかかります。
子どもが「いきたい」と言ったら、親はいかせてやりたくなるものです。
「いきたい」理由が、「みんながいくから」という、小学生レベルの理由でも、親は借金をしてでもその望みを叶えようとします。
しかし、返せると思っていた借金が、早期退職などによって、給料が激減し、返せなくなり、親が破綻してしまう、というケースを、僕は沢山見てきました。
子どもは子どもで、就職はしてみたけれど、あまりの過重労働や、人間関係の問題から長く続かず、結局は、奨学金の借金を背負ったままギリギリの生活を・・・というケースも沢山あります。
その原因として、「進学するのは当たり前」「進学しないと大変なことになる」という、偏った指導が影響してるような気がします。
 
学問とは、いい会社に入るためのものではありません。
学問とは、社会の問題を解決するために、人類が命をかけて積み重ねてきた記録です。
 
ここに、今一度立ち返ったほうがいいと思います。