植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

失敗はダメじゃない。よりよくするためのデーターだ。

鉄砲を安全に使うためには、
弾の届く範囲内に、壊れたら困るものをおかない、
が鉄則です。
とはいえ、鉄砲から半径1000m内になにもない、という
状況を作り出すのは、たとえ広いアメリカといえども無理なので、
鉄砲は、銃口の向きの制御が重要になります。
銃口を、壊れたら困るものに向けない、ということが、
鉄砲の安全確保の基本です。

同じことはロケットにも言えます。
ロケットが飛んでいく範囲、落ちてくる範囲に、
壊れては困るものをおかない、というのが大事です。
先日のアメリカのロケットの失敗でも、
人的損失が無かったのは、それを守ったからです。

(僕の目から見たら、殺傷力を持つ硬式野球のボールが、
不特定多数のお客さんのいるスタンドに飛び込むということが許されている野球というスポーツの慣例が、とても危険に思えます。)

しかし、人が乗るロケットとなると、とても難しいです。
なにぜ、危険と人間を切り離すことができません。
人が乗るロケットには、無人ロケットとは、桁違いの安全性が要求されます。
残念ながら、民間宇宙船である、
ヴァージンのスペースシップ2が墜落し、
パイロットが死傷する事故が起きてしまいました。
スペースシップ2は、飛行機だと思いますが、
飛行機よりもロケットにも近いので、
軽さの要求はかなり厳しいはずです。
そのため、安全性と軽さの両立は、とても大変な技術課題だと思います。

軽さと、安全性の追求は、
僕らの日常生活でも役に立つことです。
実際、僕らが恩恵を受けている生活技術のかなりの部分は、
航空宇宙開発に端を発しているものが少なくないです。
その陰には、多くの失敗と、それを乗り越える努力があることを、
僕らは忘れてはいけないと思います。

二本足のロボットを開発する際に、
ロボットの姿勢を検出するセンサーの小型化と高性能化が不可欠でした。
その技術開発は、自動車に応用され、雪道でスピンしない車も生まれて、人の命を守っています。
この二本足ロボットは、日本で特別に進化発展してきました。
他の国では、二本足にこだわっていないようです。
なぜ、日本人が二本足ロボットにこだわるのか。
それは、鉄腕アトムや、ガンダムなどの、二本足ロボットのアニメの影響が強いと言われています。
アニメに憧れた人が、がんばっちゃって、人の命を守る自動車が生まれたとも言えます。
しかし、そういう自動車を運転している大人が、
子どもがロボットを研究したいとか、アニメをやりたい、という夢を口にすると、食っていけない、できるわけない、と否定します。
自分は科学の恩恵に浴しながら、その恩恵を生み出す元を絶とうとしているのは、すごく馬鹿げたことです。

メーデーという番組があります。
古今東西の航空機の事故を、CGを用いながら紹介しています。
事故のおきた原因や、その対策を人類がどうやってやって来たのかを詳細に示す、素晴らしい番組です。
多くの人に見てほしいなあ、と思います。

ここのところ、ロケットの失敗の報道が立て続けな感じがしますが、その背景には、必死でそれを改善しようとしている人達がいます。
失敗は、ダメなことではありません。
失敗は、よりよくするために必要なデーターです。

僕は、大学生の時にもらった号外を今でも持っています。
それは、スペースシャトルチャレンジャーの爆発事故の号外です。
僕は、そのとき、「これで宇宙への道が閉ざされませんように。」と必死で思いました。

ロケットの失敗の報道を見て、「なんだよ、だめじゃん!」と言わずに、「がんばれ、乗り越えろ!」と思ってあげて欲しいです。

ちなみに、「自分の体で実験したい」という本があります。
この本も、ぜひよんでほしい本です。