植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

なんのために?

セガワのF9Fパンサー 1/72プラモデル
 
F9Fといえば、トコリの橋。
CGのない時代の映画ですが、素晴らしい映画です。
 
僕は、F9Fの、翼と胴体のなめらかなつなぎ方が好きです。
ブレンデッドウィングボディとかいうのかな。
そして、この、ジェット機黎明期の、
いろんな形のジェット機も好きです。
(ボートのカットラスなんてSFの飛行機みたい)
 
で、ハセガワのF9Fですが、
ものすごく古いキットなので、あちこちに無理があります。
特に、コックピットはあまりにも寂しかったので、
とりあえず、いつものように全部作ります。
これをやると、古いキットも、今風になります。
(というか、できあがったら見えないので、まったくの自己満足に過ぎません。)
 
僕は、飛行機のプラモデルの、筋彫りとか、リベット打ちとか、
あんまり興味ありません。やらないです。
なぜなら、本物の飛行機は、とてもなめらかだからです。
だから、古いキットも、気にせず作れます。
 
F9Fは、なんといっても、足が短い。そして、太い。
船の上に無理矢理着陸する飛行機は、こうじゃないとね。
前にも書いたと思うけど、
名機と言われる飛行機は、たいてい、足が頑丈です。
なぜなら、飛行機にとっては、離着陸がもっとも危険だからです。
第二次大戦中のアメリカ軍の戦闘機のなかには、
空中戦で失われた数よりも、訓練その他の、離着陸の事故で失われた方が多い機種もあります。
足は、飛行中には、完全なデッドウェイトです。
だから、飛行機の設計者は、足を軽くしたいです。
でも、実は、飛行機にとって、頑丈な足は、とても大事なのです。
(いま、IAIのクフィルも作ってますが、これも、元になったミラージュと比べたら、足がとてつもなくぶっとくなってます。)
 
僕らは、マグネットを作っています。
実は、マグネットは、すごい昔からあります。
多くは、工場の設備として使われています。
工場のクレーンは、移動速度が遅いです。
でも、クレーンは力持ちです。工場には電気も沢山あります。
だから、工場で使うマグネットは、一回に着く量が多い方がいいです。
そして、マグネットは、直径を大きくして、重たくして、電気を食わせば、必ず強くなります。
でも、建設リサイクル法によって新しく生まれたマグネットの市場では、マグネットを使うのはパワーショベルです。
パワーショベルは、実は力があんまりありません。先端を100kg重たくしたら、お尻に1000kgのおもりを追加しないとバランスが悪くなります。でっかいヤジロベエです。
そして、パワーショベルには、電気がありません。発電機を積んだとしても、あまり大きなものはつめないです。
でも、パワーショベルは、作業速度が速いです。
ようするに、工場の条件の真逆です。
そして、決定的なのは、リサイクルの現場には、そんなに鉄がない、ということです。99のゴミの中に、1の鉄しかないです。
だから、建設リサイクル法に対応したマグネットには、工場のマグネットと、まったく逆の条件が求められてしまいました。
そうしたら、マグネットは、確実に弱くなるのです。
だから僕は、マグネットを、他の装置と組み合わせて使う運用方法を提案します。
それが出来たのは、僕らがマグネット屋ではなかったからです。
マグネットを強くするセオリーの真逆を選べたのです。
 
重要なのは、「なんのために?」です。
ごく一部の性能にとらわれず、全体を見て効率を良くすることがとても大事です。
おそらく、F9Fは、足を華奢にして軽くしたら、もっと高性能だったでしょう。
でも、それだと、離着陸時の事故を頻発して、名機とは言われなかったかもしれません。
 
手段にとらわれず、目的を貫く視線が必要です。

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