植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

プロとはなにか?研究の真偽とはなにか?

昨日から今朝にかけて、
ニュースは、某理系女子で持ち切りです。

厳しく質問する報道陣。
その中の一人が、
「私たち素人にもわかるように説明してください」
とおっしゃいました。

僕は、この発言の「素人」は、だれのことをさすのかな?と思いました。

この記者が素人なのか?
だって、プロとして情報収集する人ですよね。
当然、この記者会見に来ているということは、
自社内で最もこの分野に詳しいから来ているのでは?

この記者が書く記事を読む読者のことか?
専門的なことを、読者にわかりやすく伝えるのが、
報道のプロの仕事では?

僕も時々、取材を受けます。
たいていの方は、とても勉強してきています。
とくに、新聞のサイエンス担当の方は、
それはもう、ありとあらゆるサイエンスの最新ニュースに詳しく、熱心に情報収集しています。
僕が、その人を「すごいですね」とほめたら、
「サイエンスの記事を書くプロですから」とこたえられました。

でも、中には、
「いやー、自分は文系なんでわかんないんですけど。」と
言う人もいます。
僕は、「あら、文系。僕もです。どんな本が好きですか?」
と尋ねると、「いやー、てへへ、よんでないっすね。」
です。
もちろん、こういう人は、わざわざうちに取材に来るのに、
なんの下調べもしてこないです。
文系といいながら、本も読まない。
こういう人は、無系です。

報道の人達は、世の中の複雑怪奇なことを、
多くの人にわかりやすく伝えるのも大事な仕事だと思います。
だのに、そのプロ意識に欠ける人が目につきます。
記者会見で公開された情報だけを、
そのままそのとおりに記事にするだけ。
それが、果たして、真実の報道、なのかな?と思います。

ちなみに、僕は、この大騒ぎの理由がよくわかりません。
論点は大きく二つかな?
(1)論文がねつ造で、事実無根か、どうか?
=科学の発展にともない、かつて信じられていたことが
覆されることは、よくあることです。
その場合、覆された常識は「うそ」であり「ねつ造」なのかな?

(2)うその論文が正式発表されてしまった、ことか?
=うそかどうかがわからないのですが?
たしかに、事前チェックがあますぎ、というのは、
(写真の間違いとか)チェックという仕事をした人が問われる責任です。

研究は、その成果は、その研究が実用化されて社会のためになったときに具体化するものです。だから、実現不可能な研究の成果は、実用化できませんから、自動的に成果無しになります。
事実、研究論文とはちょっと違いますが、特許の世界では、実現不可能な特許はやまほどあります。(とりあえず申請だけしておく)
だから、彼女の発明がうそかどうか、は、それが実用化されて社会の役に立てば、真だし。実用化されなければ、それまでです。
現段階で、がたがた言うことではないような気がします。

この問題の根源は、論文が有名雑誌に掲載されたことが成果である、という考え方にあるのかもしれません。

数百人の報道陣が記者会見に集まっていましたが、
その人達の人工(にんく)を考えると、悲しいです。
ものすごいコストが費やされています。

僕は、ipsでもstapでもいいから、
早く多能性幹細胞医療を実現してほしいです。
それを必死の思いで待っている人がいるのだから。
もちろん、多能性幹細胞医療じゃなくてもいいです。
なんでもいいから、苦しんでいる人を救うための研究を
前に進めてほしいです。

今回の騒動が、研究という仕事をやりにくくするような気がしてとても心配です。