植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

植松電機の宇宙開発

植松電機は宇宙開発をしています。
ロケットを丸ごと開発しています。
でも、ロケットだけ作っても、お客さんがいないと仕事にならないので、
お客さんも自分たちで作ることにしました。
だから、人工衛星の開発もしてます。
微小重力実験もしています。
 
時々、テレビや新聞のインタビューを受けると、
「国の宇宙開発より低コストで出来るんですよね?」
と質問されます。
僕は、この質問の意味がいまいちよくわかりません。
 
同じ人間が、同じく仕事をして、コストに差があるとしたら、
そのコストの差は、人件費がメインだと思います。
あとは、仕事の効率や組織の効率も影響するでしょう。
 
植松電機は、田舎にあるのでコストが都会よりは安いです。組織が小さいので、組織の効率もいいと思います。
でも、その程度です。
同じ事をやれば、同じようにお金がかかります。
現段階では、作ってる物が小さいから、コストが安いのが主です。
もしも僕らが、国と同じように液体燃料のロケットを作れば、同じようにお金がかかります。
ちなみに、僕らのロケットは、北大の永田先生考案の、特殊な燃料を使用しているので、コストが安いという差があるのは事実です。
 
で、そのコストの安さを、なんの競争力に使うのか?
僕は、人工衛星の安価な打ち上げなどするつもりはないです。
なぜなら、現在人工衛星打ち上げをビジネスにしてる人たちも、コストを下げる努力をしているはずだからです。
すでに出来る人達がいるビジネスに参入するのは、経験豊富な横綱と真正面から四つに構えるような行為だと思います。
 
そして僕は、ビジネスで「安い」を売り物にするのは危険だと思っています。
よいビジネスは、「必要」とされることです。
そのために最も重要なのは「ほかと違う」です。
幸いにして、僕らは、ロケットエンジンに関しては北海道大学と永田先生のおかげで、「ほかと違う」技術を持つことが出来ました。
他の分野でも「ほかと違う」ことをどんどん増やす努力をしています。
 
ある技術を、安い材料で安くするだけでは、誰で出来ます。
同時に、安い材料を求めてる段階で、自分たちの人件費も安くなります。なぜなら、材料費も、人件費も、同じ支出に過ぎないからです。
いまや、世界中のどこででも同じように材料が手に入ります。
となると、優位性があるのは、人件費が安い国です。
僕は、液体燃料ロケットの開発なら、北朝鮮が最強の競争力を持ってると思っています。なんたって、教育水準のわりに、人件費がとてつもなく安いですから。
僕は、人工衛星の打ち上げが本当に大きなビジネスになるのなら、北朝鮮や中国がもっと本格的にコストダウンで参入してくると思っています。そんな相手と四つに構えるのはいやです。
だから僕は、安価な人工衛星打ち上げをビジネスターゲットにしません。
 
時々、マスコミからは「やがては国の仕事にとって変わるんですよね。」なんて事も言われますが、僕はまったくそう思わないです。
そもそも、なぜ、国と敵対したり、競争するのかがわかりません。
なぜなら、僕は日本人だからです。
国がやることは、日本人がやることです。それに敵対するのはナンセンスです。
 
僕は、僕らのもってる技術や、環境を活かして、国の宇宙開発のサポートや、実験などのコストダウンに協力できればいいと思っています。
また、僕らが係わった子ども達が、国の組織で働いて、よりよくを目指してくれたらうれしいと思います。
 
と思っていたら、今では、僕の会社の実験施設を、国の研究機関の方々も頻繁に活用してくれています。
それが僕らにとって、学びになるし、経験になります。
出来ることは、毎年増えています。
それが「ほかと違う」になっています。
 
そもそも僕は、宇宙は南極以上に公共の場だと思っているから、
宇宙で金儲けしちゃいけないと思っています。
 
僕が宇宙開発をするのは、
今より輝こうとする子ども達の可能性が奪われない社会を作りたいからです。
宇宙は、不思議だし、美しいから、誰もがあこがれます。
でも、「宇宙開発なんて、ものすごいお金がかかる国家事業だ。よほど頭が良くないと無理だ。」という根拠のない常識を、確認もせず、子ども達に教える大人がいます。
その結果、僕らは、どんな夢も「お金が無い」「知識が無い」「自分なんて・・・」であきらめることが出来るようになるのだと思います。
だからこそ、僕らが「こんな小さな会社だって、できてるじゃん」って示せば、夢を奪われない人が増えるかも・・・と思っています。
だから、この宇宙開発は、やめるわけにはいかない宇宙開発です。
 
やめないための条件が、「他人の金をあてにしない」です。
だから、僕らは、宇宙開発に、誰の出資も求めないです。
自分たちで稼いで、自分たちでやるのです。
やめちゃいけない宇宙委開発だからです。
 
以前、アフリカの行政の方達が、僕の話を聞いてくれて、教えてくれました。
「教育の目標を、高所得や高収入にしてしまうと、実は高所得や高収入を得るためには、教育なんて必要ないことに簡単に気がついてしまうよ。高収入の秘訣は、奪う事だよ。教育なんかよりも、ずるさや、うそや、暴力の方が、遥かに高収入になってしまう。だからこそ、教育の目標は、高所得や高収入にしてはならない。これからの教育の目標には、きっと夢が大切だ。もしかしたら、宇宙というフィールドが、教育にとって、とても大事になるかもしれない。」
 
僕も、そう思います。
 
 
僕らは、宇宙開発の成果をマスコミに公表していません。
なぜなら、その必要が無いからです。
以前は、よくわからないから公表していましたが、
まもなく、あることに気がつきました。
新型ロケットの試験の結果を、いかにマスコミの人達に伝えても、翌日の新聞には、ロケットの大きさと、到達高度しか書かれないのです。がっかりです。
まるで、たとえが適切かどうかわかりませんが、マザーテレサの講演の記事が、BWHのサイズだけ、みたいな感じに思えました。
これでは、記者会見の意味が無いです。
だからやめました。
 
だから、一見、僕らの宇宙開発は止まってるように見えるかもしれないけど、昨年は、新型のより強力なサイレンサーを装備したロケットエンジン試験設備も完成したし、二段式ロケットの試験にも成功してるし、地味に前に進んでいますので、ご安心ください。
 
植松電機の宇宙開発は、やめない宇宙開発です。