植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

大切な夢を見失わないように。

昨日は、赤平の光生舎という企業の60周年記念事業がありました。
光生舎さんは、障がいのある方々の働く場所を作り続けている会社です。
 
その記念事業として、子ども達をあつめてのロケット教室と、
周年記念のロケットの打ち上げを頼まれました。
 
子ども達のロケット教室は、いつものことなので、
特に心配事もありませんでしたが、
周年記念ロケットが心配の種でした。
 
写真の、長さ2mほどのロケットです。
この大きさで、安全の為に、ひたすら軽く作ったので、
わずかに200gちょっとです。
薄手のケント紙で出来ています。ぺらぺらです。
この機体に、光生舎さんの方々の「夢」を貼り付けます。
 
とても軽い機体を、50mほど打ち上げるのですが、
とても軽い機体は、横風が吹いても、風見安定ではなく、
そのまんま、風に流されてドリフトしていきます。
なんとなく、飛行船のような感じです。
そして、大問題は、パラシュートです。
 
会社で行った最初の試験打ち上げでは、パラシュートが展開しませんでした。
しかし、この機体は、とってもゆっくり降りてくるのです。
パラシュートの降下速度よりも、機体の降下速度が遅いと、
パラシュートは開きようがありません。
では、パラシュートを大きくしたら?
そうなると、滞空時間がのびるので、風に流される距離が長くなります。
だから、むやみにパラシュートを大きくもできません。
パラシュートの素材を、より薄くして、徹底的に揉んで柔らかくして、機体への搭載の仕方も変えてみましたが、
そこで、時間切れ。僕は鹿児島にいくわけです。
 
で、台風の影響もあり、かなり遅くに鹿児島から帰ってきて、
中学生の体験学習があって、
そこから、最後の仕上げです。
 
まず、雨が心配されました。
そのため、新型の絵画用の防水スプレーを手配しておきました。
それを、ロケットの内側にも、外側にも、たっぷり吹きます。
とてもよいスプレーで、分厚くなりません。重量増加の心配は少なそうです。
 
使用するエンジンは、通常のA8とはちがう、太いタイプです。
このエンジンが、時々、ものすごく調子が悪いです。
点火と同時に、噴射ノズルが吹き飛ぶか、
逆噴射火薬まで上にいきなり吹き上げるか・・・。
理由は、おそらく、湿度の管理だと思います。
モデルロケットのエンジンは、紙の筒で出来ています。
この紙の筒は、湿度が高いと、膨らみます。
そして、モデルロケットのノズルと、上のフタは、粘土で出来ています。
湿度が高い環境に置かれたモデルロケットのエンジンの筒は、膨らみ、そのときに、ノズルか、上部のフタを圧縮します。
そのあと、湿度を下げたり、真空乾燥をしたりしても、
一度縮んでしまったノズルや上部のフタは、元に戻らず、
その結果、点火と同時に、内圧が上がると、上下に吹き抜けてしまうのだと思われます。
これに最初に出会ったのは、モエレ沼公園で行った、
宇宙兄弟イベントの時でした。
せっかく子ども達が作ったロケットの何期もが、
このエンジンのトラブルのおかげで、壊れてしまいました。
本当に悔しかったので、沢山調べて、実験しました。
 
で、対策方法は、エンジンのノズルと、上部のフタの部分の
外筒と接する外周部分に、瞬間接着剤をしみこませることです。
でも、それでも心配は心配。
だから、予備の機体も作りました。
 
夜の内に防水加工までやって、
翌早朝に最終組たでですが、なんと、パラシュート放出部の
インロー部分が、防水スプレーのわずかな塗膜の厚さで、
渋くなってる。
急遽、テフロン系のスプレーを使って、すりあわせをして、
なんとかクリアー。
 
で、いよいよ本番。
過去の経験から予測できましたが、
休日に「希望する人おいで」パターンのロケット洋室は、
小学校の1年生が大半です。あとは、3年生以下までで、全体の90%ほどになるかと思います。
高学年で来る人は、ごく希です。
僕は、この現象に不安を感じています。
小学校の高学年くらいで、もうすでに、休日でも忙しすぎるのだと思います。
本当なら、もっと伸びやかに、自分の意志であそぶ時期のような気がします。
 
ロケット教室中は、雨が降っていましたが、
ロケット打ち上げ時には、途中、ちょっと降りましたが、どんどん天気は回復しました。
子ども達のロケットは、全部綺麗に飛んでいきました。
 
そして、記念ロケット。
ものすごく心配。
いままで、一度もパラシュート開いてない。
でも、ロケットは、ゆっくり伸びやかに加速して、
上空でパラシュートを放出。
白いパラシュートも綺麗に開いて、
それはもう、ゆーっくり降りてきました。
風もほとんど無く、青空を背景に、とても綺麗でした。
いやー、心配事が終わった。
ついでに予備機も飛ばしました。
子ども達が拾いに行ってくれましたが、
とても柔らかいロケットなので、子ども達が引っ張ったり、
強く掴んだら、いちころだと思っていましたが、
二機とも無事に回収されていました。
子ども達が、気をつかって、丁寧に運んでくれたのだと思ったら、
とてもうれしくなりました。
 
このロケットの機体には、いろんな「夢」が書かれていました。
その「夢」を見て、はっとしました。
「家族が幸せでありますように」
「お姉ちゃんがはやく元気になりますように」
「歩きたい」「走りたい」
「ラーメン食べたい」「前のように働きたい」
「パソコンをおぼえたい」・・・・
 
夢がありません。と思ってる人に、
もう一度、夢について考えて欲しいと思います。
 
夢はなくないです。夢はあります。
その夢を、どんどんかなえていくべきです。
 
だのに、夢は、職業や進路。夢は一つ。
夢は、賞賛されるようなもの。それでいて、できそうなもの。
こんな考えを、どこかですり込まれているばっかりに、
本当に大切な沢山の「夢」が見えなくなってるとしたら、
それはもう、ものすごくもったいないことです。
 
夢は、なんこあってもいいです。
どんなことでもいいです。
どんどん、かなえていくべきです。
 
 
ちょっと心配事が多かった今回のイベントでしたが、
とても切なことを、光生舎の方々が教えてくれた気がします。
やって、よかった。
 

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