植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

草津KMPは、やはりすごい集まりです。

週末は、滋賀の学校でお話しをさせていただいたあと、
翌日には、ロケット教室でした。
今回は、今年開発に力を入れている、ペーパーロケットを使用しました。
 
従来、一般的に使用されているα3というモデルロケットは、
作りやすくて、性能がいいです。
しかし、その性能が問題で、国土が広いアメリカ生まれだけあって、一番よわいロケットエンジンを使っても、日本では飛びすぎます。
今までやってきた経験では、おおよその目安として、
100m競争が出来るくらいのグラウンドが必要です。
(もちろん、無風ならまったく問題ないですが、たいていは風があるのです。)
でも、この条件では、打ち上げ出来る場所は、かなり限られてしまいます。
また、ロケットの値段も問題です。
ネットで探すと、おおよそ2500円〜3500円くらいです。
エンジンは一本500円くらいですから、これを教材として使うとなると、
発射台や、打上に関わる人の費用などを含めると、
おおよそ、6000円から8000円くらいで行われているケースが多いようです。
 
課題は、値段と、打ち上げ場所です。
それを解決するために開発したのが、あんまり飛ばないロケット。
一番よわいAのエンジンで、40mくらい。次に強いBのエンジンで、通常のα3をAで打ち上げたくらい飛びます。
ですから、50m四方あれば、それなりの風でも打上可能です。
また、ペーパークラフトですから、価格も安価に出来るはず。
 
しかし、最大の問題は、ペーパークラフトなので、作るのが若干大変です。
とはいえ、ロケットですから、構造はとても簡単で、課題になるのは、
(1)筒の丸め方。
(2)筒の接続の仕方。
(3)尾翼の取り付け方。
くらいです。
これさえ知れば、あとは、作業自体は単純です。
 
最初の実験は、千葉県の柏で行いました。
対象は、小学校低学年がほとんどでした。
製作時間は、2時間ほどもかかりました。
 
2回目は、滝川高校のSSHの生徒さんです。
おおよそ90分かかりました。
 
3回目が、今回の滋賀草津です。
対象は、3年生から6年生。
おおよそ90分かかりました。
作っている様子を見ている限り、3年生はちょっと厳しい感じです。4年生くらいからだと、わりと出来る感じ。
でも、最も重要なのは、上記の3つのコツを、やってみせることです。
ロケットの構造は、筒が3本と、尾翼3まいです。
ですから、筒の1本と、尾翼の1枚は、作って見せても大丈夫です。
あとの2本と2枚を、子どもが作ればいいかんじ。
無理して、最初から子どもに全部やらせようとすると、3つともうまくいかない可能性が高いです。でも、作ってみせるためには、作った事がある人が必要です。
 
以前、このロケットの前身のモデルを、市内の小学校の4年生に作ってもらいました。
そのときは、生徒が15名ほどに、サポートは僕らが2人です。
こうやってやるんだよ。と見せたら、すぐにそれを真似して、教え合っています。
この「真似する」「教え合う」がとてもだいじです。これができたら、
すごい速度で情報が伝搬します。
しかし、「説明書を見てごらん」だけだと、子ども達は不安になります。
実際に目の前でやってみせることで、力のいれ具合や、
ここまでやっても大丈夫なんだ、ということを知ることが出来ます。
 
そのためにも、教える人の動線がとても重要です。
柏も草津も、狭いスペースにかなりの人数だったので、
僕らがサポートに回りきれませんでした。
作ったことがある人が少ない場合は、その経験者があちこち回らないといけません。
そのためには、動きがスムーズなことが条件になるから、会場にいれる人数を制限した方がいいです。
 
ちなみに、高校生が90分かかるのは、僕らも本当に不思議に思います。
でも、大学生だと、もっと時間かかると思います。
なぜか、学歴が上がれば上がるほど、手が遅くなります。失敗を恐れるのか、
なかなか手が動かなくなります。
これは、先日会議で関わった大学の先生も嘆いていました。
知識も経験も増えているはずなのに、学歴が上がるほどに、より失敗を恐れるようになるのは、
なにか教育システムに問題があるかもしれない、と僕は思います。
 
今回もペーパークラフトロケットは、順調に飛びました。
パラシュートがでない機体がありましたが、もっとチェックしてあげたらよかったなあ、と反省です。機体の継ぎ目のすき間から、パラシュートを押し出すガスが漏れてしまっていました。
そこをふさいで飛ばせば、うまくいったと思うのですが、
あの日は飛ばした機体も多かったので、余裕を持って準備したエンジンもギリギリになってしまったのと、あれ以上やっていたら、暑さで倒れる子がでたかもしれないという判断から、
リトライが出来ませんでした。残念です。(僕らもどうにかなりそうな暑さでした。)
 
でもさすが、草津KMP。自分たちで打ち上げ出来るようになってくださったので、
早速リトライの準備をしてくださったそうです。
 
僕としては、自分たちでロケット教室が出来る人が増えてくれるのが一番うれしいです。
草津KMPのみなさんは、学校での授業としての僕のお話も実現してくれました。
それも、一度に2校も。
そして、ロケット製作も打上も、自分たちで出来るようになってくれました。
ものすごい勢いで、できることを増やしてくれています。そして、できることが増えると、
またあらたに、関われる人も、輝ける人も増えるのだと思います。
 
草津KMP。関わると、間違いなく、関わる前とちがう人生がスタートします。
仲良くなって損はない、素晴らしい集まりです。