植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

現実はそんなに甘くない。でも、世界は広い。

映像の世紀という番組があります。
過去の映像をもとに、人類が歩んできた道を見せてくれます。
 
いま、新しいシリーズをやっています。
第三回は、第二次世界大戦のお話しでした。
 
そこに、アドルフ・ヒトラーが出てきます。
そして、ヒトラーの愛人のエバ・ブラウンも登場します。
 
番組中では描かれていませんでしたが、
僕は、戦争の前から、最後まで、ヒトラーを愛した(のかな?)エバ・ブラウンの心中が気になりました。
 
最初は、きっと、ヒトラーはすごかったのだと思います。
第一次大戦後の莫大な賠償に苦しみ、
その後の世界恐慌にも苦しんだドイツを、
一瞬とは言え豊かな国にした
ヒトラーを尊敬して、愛したのかもしれません。
 
でも、あのときのドイツは、尋常では無い公共投資のお金を
ドイツの銀行から無理矢理引き出す大赤字経済だったそうです。
企業で言うなら、自分で振り出した手形を、自分で割り引くのです。そして、割引の上限がない、という素晴らしい状態です。
でも、無いお金は無いから、それをどこかから獲得しないといけません。
それは「奪う」という形になっていきます。
 
おそらく、奪うという行程の中で、ヒトラーはどんどんおかしくなっていくと思います。
それを、エバ・ブラウンはどういう気持ちで見つめていたのかなと思います。
 
ダニエル・キイスさんのSFで、「アルジャーノンに花束を」という本があります。
知的障害のある若者が、新しい薬によって、ものすごい勢いで頭が良くなっていきます。
でも、彼は、どんどん優しさや思いやりを失っていくのです。
その悲しさが、独特の手法で描かれています。
必読の本だと思います。
 
僕は、会社を経営しました。
やったことが無いことをやりました。
世の中は、そんなに甘くありませんでした。
現実を見せつけられました。
それに対応するために、沢山学びました。
そして、どんどんおかしくなりました。
優しさや、思いやりなんて、まったく無駄な世界でした。
でもね、世の中、それがすべてではありませんでした。
僕は、たまたま、ものすごい豊かだけど、争いが絶えない奪い合いの世界に足を踏み入れていただけでした。
世界は広いです。そうではない世界も存在しました。
そこに気がつくことができたから、そこから抜け出せました。
そして、さんざん、世の中が甘くないことも、現実は厳しいことも知ってきたから、そのにおいに敏感になりました。
僕は、もうそこに、足を踏み入れないと思います。
 
幸村誠さんの、「ヴィンランド・サガ」という本があります。
その主人公は、復讐心から、地獄に足を踏み入れます。
そして、そこから抜け出します。
抜け出すけど、抜け出しきれない苦しさが描かれます。
読むたびに、自分の心の中を描かれているような気がします。
 
 
僕は、いろんな人に、現実を見ろ!と言われてきました。
でも、本物の現実は、彼らが言うような甘いもんでは無かったです。
でもそれは、僕にとってたしかに学びになりました。
でも、あの学習は、あんまりしない方がいいような気がします。
だから僕は、地獄に踏み込まないでも、地獄を学ぶ仕組みが必要な気がしています。
だから僕は、このfacebookで、すこしだけ地獄の話と、地獄からの抜け出し方を表現してみています。
難しいけどね。
 
 
もしもいま、戦いの日々で、心の優しさや思いやりが足りないかも・・と不安になったら、ぜひ、上記の本を読んでみたら、
ひょっとしたら、少しだけ、変われるかもしれません。
(個人的な感想であり、効能を保障するものではありません。)