がんばれ、オービタル・サイエンシズ!
アメリカの国際宇宙ステーションへの物資補給用の民間ロケットが、打ち上げ後に爆発して失敗したという報道がなされています。
打ち上げ後に、エンジン部分が破裂して、推力を失ったロケットが
地上に落下していく様子は、とても悲しかったです。
この失敗についての報道で、気になったのは、
報道に、民間ロケットの参入が増えているが、信頼性に疑問が残る。
という論調があるということです。
すごく違和感を感じます。
そもそも、宇宙開発は、民間からスタートです。
個々人が努力をしました。
それが、東西冷戦時に、核兵器の輸送システムとして、
国策として進化したに過ぎません。
ロケットを武器にして、巨大化して、高額化したのは、
国家です。
その国家の宇宙開発が、国のやることがすべからくそうであるように、肥大化し高額化していくから、とても平和的な運用ができなくなって、スペースシャトルが引退です。
スペースシャトルのミッションのうち、かなりの割合が、軍事的なミッションだったことを知る人は少ないです。
国家が、手を引くことで、ようやく、本来の民間の平和利用の宇宙開発の時代がきたのです。
日本の宇宙開発に限って言えば、核兵器を持たなかったことによって、他の国とはちょっと違う進化をしていますが、
それでも、もともとは東大からスタートした日本の宇宙開発(ISAS)は、アメリカとの連携で途中からはじまった宇宙開発に押しのけられた感じがします。何せ、一時は仕分けられそうな勢いでしたが、よくぞイプシロン復活しました。
イプシロンをつなぎ続けた人達の努力と根性に感謝です。
あまりにも高コストなスペースシャトルを退役させるために、アメリカは国際宇宙ステーションへの物資補給のために、民間ロケットの参加を公募しました。
その結果、選ばれた会社が、ようやく実用運用を開始した状態です。
国家の宇宙開発だって、最初は失敗の連続でした。
民間だって同じように失敗します。
ましてや、ロケットは、重力と戦う製品ですから、とにかく、軽く、強く、速くなければいけません。
心配だから念のため丈夫にしておくか、という設計はできません。
一般的なクレーンなどの吊り具は、使用する重さの5倍から7倍の力に耐えるような強度が与えられていますが、
ロケットでそんなことしたら、地面から離れられません。
過酷な条件で運用されるからこそ、失敗する可能性は常にあります。
それを前提とし、覚悟した上で運用するのがロケットです。
だからこそ、安全には細心の注意を払い、周囲に被害や損害を与えないように気を付ける必要があります。
しかし、このロケットの失敗を、「まさか」と言う人がいます。
「まさか」じゃないです。
事前に、失敗する可能性があるということも説明されているはずです。
だから、失敗した時の準備をしているはずです。
今回、日本の大学のカメラも失われたそうですが、当然、スペアを用意しているそうです。
今回のロケットに関わった人は、覚悟しています。
「まさか」と言ってる人はいないはずです。
「まさか」と報じるのは、低レベルな報道だけです。
旅客機だって墜落する可能性を持っています。
タクシーだって事故を起こす可能性があります。
僕らは、それを覚悟して利用していることを忘れてはいけません。ン?そんな覚悟していない?事故を起こすことは許さない?
なに言ってるの?
だって、事故おきてるじゃん。
見たくないものから目を背けてるだけじゃない?
でも、いくら目を背けても、確率的には、いつかその状態はやってきます。そのとき、目を背けていた人は、対処できないでしょう。
それは、地震や津波も同じかもしれません。
以前、(ハドソン川:まちがいです。)『ポトマック川』に離陸直後の飛行機が墜落したことがあります。(ハドソン川は全員生還の素晴らしいケースです。)
わずか数人だけが生き残りました。
その人達は、飛行機のうごきが変だと思った時に、衝突姿勢を取った人達です。
飛行機にのると、最初に、衝突時の姿勢とか、説明されますよね。
それをちゃんとやった人が生存の可能性を高めたのです。
でも、落ちるわけない、と思い込み、安全に関する説明を聞いていなかった人達は、生存の可能性を下げてしまいました。
僕は、自動車を運転するとき、シートの背もたれはかなりおこしています。ヘッドレストと頭との距離が遠いと、追突された時に、
首を痛める可能性があるからです。
また、シートの背もたれを寝かせていると、衝突時に、自分の体がシートベルトをうまく利用できない可能性もあります。
ハンドル操作も、シートの背もたれがおきていた方が、素早くできます。ラリーのドライバーの乗車スタイルは、参考にすべきです。
もちろん、靴を履いています。事故が起きたとき、一刻も早く逃げ出すためです。
車には、寝袋も積んでいます。防寒アルミシートは乗車人数分積んでいます。
僕のカバンはおおきいです。そこには、過去の講演でおきた失敗をリカバーするための装備がたくさんです。
プロジェクターのケーブルは40m持っています。
小型スピーカーも常備です。プロジェクターとつなぐアダプターは、
入れる場所を変えて3つ持っています。
ポインターも電源アダプターも3つ持っています。
そして、救命救急の講習を受けたから、止血帯も、止血ガーゼも、人工呼吸用のアダプターも持っています。
自動車には、プロジェクターも音響装置も積んでいます。
実際、それが役に立つことも少なくないです。
備えよ常に。
ボーイスカウトの言葉です。
宇宙開発が、国家の手を離れて、ようやく、
「宇宙開発は国家事業だよね。すごくお金がかかるよね。よほど頭が良くないと無理だよね。」という常識が終わります。
そして、ロケットは武器として利用される可能性を減らします。
繰り返しになりますが、ロケットを武器として運用するのは国家です。
だったら、宇宙開発が民間に移行するのは、喜ばしいことのはずです。
ロケットの安全を確保するためには、
とにかく、人がいない場所が重要です。
失敗する可能性があるからこそ、その影響範囲内に人がいないことが最適な安全対策です。
でも、そのためには、広大な土地や海が必要です。
そこを拝借できたとき、民間の平和な宇宙開発が実現します。
考えてみてください。
国家が行う宇宙開発は高コストです。
気象衛星一つあげるにも、ものすごくお金がかかります。
それは、税金で支払われます。
それが、やがて、国家の収支が悪化し、お金がないからできません、になったらどうします。天気予報の精度がいっきに下がります。津波や台風の予報ができなくなります。
もちろん、海外から情報を買うことはできます。でも、それを買うのも税金です。
なぜ国家が行うと高コストで、民間がやると安いのか?
民間が手を抜いているから?
なぜ、公務員が高級で安定していると評価されるの?
それが、もうすでに、国家高コストの原因じゃない?
「民間の宇宙開発は信頼性が低いよな。危険だよな。」
なんていう風評が、くだらない報道によって生み出されないようにと、僕は祈っています。
ようやく、宇宙が平和利用できるようになる、チャンスなんです。
どうか、民間の宇宙開発を、応援してあげてほしいです。
がんばれ、オービタル・サイエンシズ!