植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

職場体験

植松電機は、中学校や高校の職場体験を受けいれています。
毎回、5人くらいが来てくれます。

植松電機には、単純な繰り返し作業があんまりありません。
基本的には、「それをすることで修練にならない」段階まで慣れてしまった仕事は、外部委託した方がいいと思っています。
大切なのは、時間です。

そのため、職場体験に来た子達に、なにを体験させるのか、
は、悩みの種です。
毎回、かなり真剣に考えます。
でも実は、最も考えているのは、「なにをさせるか」よりも「なにを伝えるか」です。

僕が、職場体験に来た子達を見ていていつも感じるのは、
「心を開かないなあ」です。
遠慮し、おびえ、緊張しています。
おそらくそれは、本当に就職したときもそうなるでしょう。
そして、それは、成長にとってはマイナスです。

彼らは、友達同士でなら、ふざけあったり、笑いあったりします。
おそらく、どこまで自分を見せても大丈夫か、という距離感を把握してるからだと思います。
でも実際には、友達同士ででも、演技している人が多いです。
よくよくみていると、行動のほとんどが芸能人のものまねだったりする人もいます。
それは、「心を開く」とは、ほど遠い状態です。

「心を開く」ために大事なのは、
自分の行動や存在が、納得できない理由で、否定されない、拒否されない、ことかもしれません。

僕は、職場体験では、心を開いてほしいなあと思うし、
心を開けるように関わりたいと思っています。
そのため、子ども達の存在を否定せず、拒否せず、
どうやったら、子ども達のいいところを伸ばせるかを考えます。
だって、もし実際にその子達を雇ったとしても、
同じ事をするからです。

たいていの場合、職場体験で来た子達には、
「加工」を体験してもらえます。
ごつい金属が、容易に思うような形に出来ることを知ってもらいます。
そして、「実験や研究」も体験してもらいます。
自分で考えて試す仕事があるということを知ってほしいからです。
その中では、ロケットを作ってもらうこともあるし、
実際のロケットエンジンの試験を手伝ってもらうこともあります。
昨日も、子ども達の作った超小型センサーユニットを搭載したロケットは、青空にきれいに飛んでいきました。

しかし、あるとき、体験学習後に、学校からクレームが来ました。
「遊ばせていないで、ちゃんと職場体験させてほしい。社会の厳しさを教えてほしい。」だそうです。

メロスは激怒した。

という、フレーズが頭に浮かぶほどに、おもしろくないです。
もしかしたら、スーパーサイヤ人位になっていたかも。

社会の厳しさって、なんでしょう?
それは、責任だと思います。
そして、仕事とは、人の役に立つことです。

仕事の厳しさとは、決して、理不尽な厳しさや強制などではないはずです。
仕事とは、嫌なことでも、余計なこと考えずに我慢して、お金をもらうことではないと思います。
そして、もしも社会の厳しさがそんなことなら、
こんな事言う先生が、十分にそれを提供してくれていると思います。

おそらく、この先生のイメージする仕事感は、
僕の持ってる仕事感と、まるで違うものだっのだと思います。
そして、この先生が、こういう仕事感を持つからには、
実際に、そういう仕事もこの世には少なからずあるのでしょう。

重要なのは、「どっちが正しい」かは無い、ということです。
どっちも存在するのです。
あとは、「どっちを選ぶか」です。

世の中の、すべての仕事が、嫌なことでも、余計なこと考えずに我慢して、お金をもらうこと、だったらまずいです。
だって、これだと、食っていくためになら、犯罪も犯せる可能性があるからです。
そして、これからは、ロボットの高性能化によって、単純な繰り返し作業は自動化されてしまい、恐ろしく安価な仕事になります。

だから、僕は、子ども達に、僕が目指す仕事感を伝えます。
だって、実際、僕と同じような会社を目指している経営者も沢山いることを知ってるからです。
楽しく、自発的に、考えて試すことを必要とする会社は、
少なくありません。

これからの時代に必要なのは、
やったことがないことをやりたがる。
あきらめない。
くふうする。人です。

僕は、そういう人を必要とする社会がある、ということを、
子ども達に示し続けたいと思います。