植松努のブログ(まんまだね)

基本的に、facebookの僕の記事を転載します。

進路について思うこと。

僕が中学生の時、三者面談がありました。
母さんが学校に来て、僕と、先生と、母さんで話し合いです。

まあ、針のむしろとは、このことか。です。
なにせ、成績が悪かった僕の可能性は、とてつもなく狭いのです。

まるで、重大な病気の宣告でもされるかのような、
重苦しい雰囲気の中、
「この成績では・・・」という先生の説明です。

深刻そうに聞く母の横顔を見て、
まったく申し訳ない・・・と縮こまっていたのをおぼえています。

その三者面談で出された答えは、
「この成績では、普通高校に行っても授業について行けません。だから、就職のために、工業高校に行くのがいい。進学して、飛行機やロケットの仕事なんて、論外です。」
でした。
なんだか、ぼーっとその宣告を聞いていたのをおぼえています。

そのあとです。
母さんが、「思うは招く」という言葉があってね。
と教えてくれました。
でも、そのときの僕には、なんだか、気休めな言葉に思えました。

でも、母さんなりに、いろんなことをしてくれたようです。
当時の校長先生に成績表をみせたら、
「この成績なら、普通高校でも大丈夫でしょ。」と言ってくれたのだそうです。
それをうれしそうに僕に教えてくれました。
今にして思うと、進路の先生を飛び越えて、校長に直談判ですから、進路の先生にとっては、とてつもなくおもしろくない話でしょうね。

で、僕は、大学卒業後に、名古屋で飛行機やロケットの仕事に就きました。
そこで多くのことを学び、実家に帰り、家事手伝いからスタートして、やがて、家業の自動車電装品修理業がどんどん仕事がなくなり、しょうがないから、リサイクル用の電磁石を開発し、
それもさっぱり売れないし、売れたらこわれるし、
なんとかなったとおもったらリーマンショックだし・・・
まあ、いろんな事がありましたが、
結局また、僕は宇宙開発の仕事ができています。
でもそれを支え続けたのは、間違いなく、
「飛行機やロケットが好きだった」ことと、
「思うは招く」という言葉のおかげだと思います。

いまにして思うと、あの三者面談の気まずさは、
まるで、自動車教習所の感覚に似てるかも。
運転しはじめたら、鼻歌交じりでできる運転を、
先生の顔色伺いながら、びくびくしながら習ってました。
それに、とっても似てる感じがします。

おそらく、中学校や高校の進路決定で、直接的に支配される人生はないと思います。
人生は、なんぼでもかわります。そのチャンスは沢山あります。

いま、日本の大学も、受験も、猛烈な勢いで変化しています。
なんたって、少子化がすごいからね。
だからこそ、その向こう側を見据えることが大事です。
そしてそれは、「やりたいこと」「だいすきなこと」の先にあると思います。
でも、学校が与えてくれた範囲から、「やりたいこと」と「だいすきなこと」を選んでるだけでは、その選択肢は偏りすぎです。
学校が与えてくれない範囲で「やりたいこと」「だいすきなこと」があるのがいいです。そしてそれは、一つじゃない方がいいです。沢山あった方がいいです。
そうしたら、進路の幅も広がります。どんな進路を選んでも、結果的には人生にプラスになるようになります。
(やりたいことやだいすきなことがピンポイントだと、それに特化した勉強しかやっていないと、空振りになる可能性は高くなります。ってことは、理解できますよね?)

学校の進路相談や三者面談はとても大事なものです。
でもそこで、あきらめ方を身につけないようには気をつけた方がいいと思います。
そして、やりたくもないことを夢だと思い込まされないことも大事です。(せっかく偏差値高いんだから、医学部いかないともったいない。なんていう進路指導は、さすがになくなってることを祈ります。)
進学は、「やりたいことや、大好きなことを、もっと学ぶための、数ある手段の中の、ほんの一つに過ぎない。」です。
偏差値の範囲から進学先を選ぶ、だけの進路相談は、きっと、本質的なものではありません。

やりたいことや、大好きなこと。
それは、本当は、小さい頃から、大切に育てていくべきことです。でもそれは、多くの場合、受験を意識した頃から、「テストに関係ないからやめなさい」と奪い取られていきます。
でも本当は、その中に、大事な進路が隠れている可能性が高いです。

好きなことはがんばれる。好きなことはおぼえちゃう。
これが、社会に出てからの、人の成長を支えます。

親子で、進路について話し合うとき、ぜひ、「やりたいこと」「大好きなこと」について話し合ってみたらいいと思います。
そのときには「食えるか、食えないか」を論じるのではなく、
やりたいことを、いかにしてやるか。大好きなことをもっと伸ばすにはどうしたらいいか。そして、やりたいことや、大好きなことを増やすにはどうしたらいいか。を考えてみたらいいと思います。

「なにかやってみたいこととかないの?」と尋ねたとき、
「いやー、べつにー」がかえってきたら、
ちょっとまずい、と緊張した方がいいかも。

そうならないように、子どもの「好き」を奪わないようにしていたら、きっと、進路相談や三者面談で、あんまり苦しまなくてすむかもしれません。

(「いやー、べつにー」になってしまった子をどうすればいいのかは、人それぞれだから特効薬はないと思います。でも、もしかしたら、僕のTEDxを見せたら、ひょっとしたら、なにかいいことがあるかもしれません。)